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鹿の悲鳴から思うこと

なかなかしんどい事を書いていますが、ただの農家の一意見だと思っていただければありがたいです。

(動物の命とか、殺すとかそういう話も含んでいますので、そういう事をあまり知りたくない方は、読むのをおすすめしません。)

この冬で狩猟免許を取得して2回目の猟期に入っています。
猟期というのは、京都府では11月15日から3月15日の期間にあたり、狩猟免許を持っていれば猟をしても良い期間になります。

昨年初めて鹿を仕留めたり、解体してお肉を頂いたりという経験をして、1年が経ちまた冬になりました。
昨年に狩猟の事を書いた記事がこちらになります。

鹿を捕獲してから考えた事
久しぶりに読み返しても、かなり生々しくてよくもこんな文章を公表したなぁと思います。
反響も少しあって、中には全く知らない人から「あなたも同じ目に遭いますよ」みたいな不幸のメールも頂きました。

それからも、もちろん狩猟について考える事はありまして、農作業の忙しい春夏を越えて、また畑の野菜を鹿がどうにかして狙ってくる時期になり、再び色々と考える事が多くなってきました。

基本的に僕は、専業農家なので鹿に作物を食べ荒らされる事は、そのまま農業の売上や生活に直結します。なので、本当は自分の住む地域から鹿がいなくなれば良いと思っています。

見たくなったら奈良まで行けばいくらでも触れるので。

そして、いなくなって欲しいけど、だからと言って積極的に罠を仕掛けて鹿を殺してやろうとは思っていません。
当たり前ですが、とってもかわいそうなので。。
何をしているかと言えば、地域で狩猟免許を持っている人が実質2人だけなので、たまたま罠に入ったとか、畑を囲っている網に引っ掛かってどうしようもなくなっている、とかの場合に自分が行って仕留めるという事をしています。

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こんな雄鹿は角もあって気性も荒いので油断をすれば大ケガをします。

 

「仕留めてる」は言い方で、まぁ殺しているという事です。
罠でも網に引っ掛かっている場合でも、ほっとけばいずれ死んでしまいます。
それをわざわざ殺すのは、どうなのかと思いながら、できるだけ苦痛を伴わないようにと、出来る場合は頭を一発思い切り叩いて気を失わせる、という事をします。
できない場合は槍を使う事もあります。鉄砲の免許はないのですが、もしあればそれが一番苦痛が少ないのかもしれませんが。
実はそれを去年から数えてもう10回以上は経験してきて、最初に比べると慣れてきたように思います。
最初の頃は、少し眠れなくなる事もありましたが、今はそんな事はありません。

でも、やはり大きい動物を殺すというのは、蚊やゴキブリを潰すのとはまた違います。
慣れたと言っても、毎度ダメージがあります。

たぶん地獄に落ちるわ…、と半分本気で思ったりします。

鹿は虫ともヘビともまた違い、哺乳類だからか、わかりやすい家族みたいな存在を感じてしまいます。家族がいるという事は、そこは犬や猫や人間とも同じで、もちろん感情があって楽しい感情や悲しい感情があるのだと思います。

 

身動きが取れない鹿に近付くと、悲鳴を上げる事があります。
それは本当になんとも言えません。

また正直なところ、自分がやってる事が、いまだによくわかりません。

 

でも、最近思うことがありまして。
無茶な事だとは思うのですが、こういう事をお肉を食す人間は一度は経験した方がいいんじゃないかと思います。

スーパーや食卓に並ぶお肉は、感情を持った動物の命の一部なんだという事が、僕は鹿の悲鳴を聞いたりしてるうちに、ようやく感じるようになりました。
命を頂くから「いただきます」と言う。と言う事が理屈ではなくて、心から思うようになってきました。農業を始めてから、心が冷たくなったような気がしていますが、そんな自分でも心境の変化を感じています。

と言っても相変わらず僕はお肉を食べているので、この変化は食べる直前の心の中だけの話ではあるのですが。

でも野菜でもお肉でも魚でも、「金払ったら手に入る」という風にほっといたらなりがちなので、人に強要するでもなく、心の中だけでもお肉を頂く時に、もう少し命を頂くという事を実感できる人でありたいと思います。

お肉は屠殺場を経て、お肉になります。
屠殺の直前の牛や豚は、悲鳴をあげていた鹿と同じ怖さを味わってるのだと思えるようになりました。
そんな事は、みんながみんな経験できる事ではないのですが、自分はたまたまこういう経験をしたので、それを読んでもらえたらと思いました。

ちなみに肉食が悪だとかそういう意見ではないです。お肉を食べる時にこれは感情のあった命なんだと思う事が0→0.5くらいの意識になってもらえれば、なんとなく自分が鹿を殺す意味も少しはあるのかなという、かるい押し付けです。

こんな事を書くと、またお正月(去年は元日に不幸メールが来ました)に嫌な思いをするかもしれませんが。笑