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無農薬という事について

2016年11月24日(木) 考えごと

あらい農園では、無農薬で野菜を栽培しています!

…とよく言うのですが、この「無農薬」という言葉は農業をする上では結構気を遣う言葉だったりします。

何が気を遣うのかと言いますと、一つは法律上での無農薬という言葉の問題です。

実は「無農薬」という言葉は野菜を販売する際に簡単には使えない言葉なんです。
有機農業をする農家は、野菜を販売する際、お客さんに農薬を使っていないという事をアピールする事が多いのですが、そこで「無農薬」「有機」「オーガニック」などの言葉は実は簡単には使ってはいけないのです。

これは有機JAS法という法律で定められて、有機JAS認定を取得した農家だけが使用して良いのであって、そうでない農家はその有機JAS認定を受けていないから、公式には有機栽培とか無農薬とは認められていないのです。

なので、そうでない農家は野菜を販売をする時や、直売所などで野菜を販売する際は、例えばよくある表記として「栽培期間中、農薬不使用」などとするのです。

この有機JAS法は、賛否が分かれているようで、一応守ることは守るけど、たいしてJAS認定は重要じゃないという人もよく聞きます。
あらい農園では認定は取得していません。

理由は、特に必要と思ったことがないのと、どうやら書類の手続き等が大変らしいからです。
でも、一応これは法律らしいので、販売する際はちょっとだけ気を遣って怒られないようにしています。

という法律的なところでの、気の遣い方が1つです。

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2つ目は、この「無農薬」の捉え方が農家と、消費者とで結構違っているところです。

違うというのは、イメージです!

ずばり、無農薬は多くの農家にとっては迷惑な存在です。
もちろん全部じゃないですが、決して最初から好かれる存在ではありません。

反対に消費者からすると、無農薬は「良い」イメージが大半ではないでしょうか。
それは多くの場合、農薬は身体に悪いというイメージから来ているものだと思います。

なぜ、同業の農家にとって迷惑な存在かと言いますと、これは僕が偉そうに言えることでは全然ないのですが、恥を承知で言いますと、草をボーボーに生やしてしまう事がよくあるからです。…だと思います。。

きっと、無農薬でも草をボーボーにぜずに、きっちりと管理ができていればだいたいの場合は問題はありません。
でも、無農薬での栽培にとって、草は何よりも頭を悩ませる問題なので難しいところです。

なぜ草をボーボーにしてはいけないかと言いますと。
僕が思うところでは。

・雑草が大きくなって種を落とすと、また何倍もの雑草が翌年に発芽してくる。
・虫の住処になって、そこから野菜を食べにくる。(あらい農園でも、コオロギの住処を作ってしまい、苗を容赦なく食い荒らされました…)
・景観が損なわれる。(雑草が全くないのも味気ないのですが、生い繁ってるのも綺麗なものではありません…)

などではないでしょうか。

田畑が、すぐ隣り合わせにある農業では、草を生やすことは周囲の迷惑になってしまいます。なので、草をボーボーにしてしまう事は、何よりもしてはいけません!

そして、これを残念ながらしてしまうのが無農薬の農家だったりします。
僕もこれは全然できておらず、毎年猛省しています。
本当に、草の問題は何よりも気をつけなければいけません…!

 

という事で、「無農薬」というのは、場面や場所によって結構気を遣って使用する言葉だったりするのです。

 

長くなりました。。

また次回は無農薬についての栽培面での事を書きたいなと思います。


美味しい野菜について

2016年11月11日(金) 考えごと

美味しい野菜について、ちょっと思うところを書いてみようと思います。(長いです。)

食べ物の美味しいは主観なので、農家は自分の作った野菜やコメが上手いと思っている事が多いように、結局は気持ちの部分も多いかとは思います。

一緒に食べる人や、食べる状況や、食材のイメージなんかも大いに影響しますね。あのテレビで目隠しして一流品か安物か食べ比べるやつみたいに。。

きっと野菜も大いにそれはあるとは思うのですが、でもやっぱりそれだけではないですね。

 

僕は農業を始めるまでは、実は野菜には全く興味がなくて、人参が土に埋まってる事や、茄子がぶら下がって成っている事も全然知りませんでした。だから当然、野菜に違いがあることも知らなかったし、「無農薬やから高い」それだけで思考停止な感じでした。一人暮らしで野菜取らなあかんから、100円ショップの値下げシール貼られた後のコールスローサラダを食べたら、とりあえず大丈夫とか思ってたので。

 

と言う感じでしたが、ここまで4年半程自営で試行錯誤して野菜を作ってみると、なんとなく美味しいと言われる野菜についていくつかわかった事がありました!

よく言われる勘違いに、「無農薬の野菜だから美味しい」というのがあります。

無農薬=美味しい。という事はなくて、思うに無農薬で作りたいと思う農家は、美味しい野菜を作りたいとも考えると思うので、そこで「肥料にもこだわる。」だから味が美味しくなるんじゃないかと思っています。

そこには、肥料の種類やタイミング、量、それからそもそも肥料をやらないという事もあります。

そのあたりのさじ加減は、季節によっても違うし、肥料の種類、土質、野菜によっても違うので、この辺りが味の違いで大きいのかなと思っています。

肥料と言えば、大きく分けて、有機肥料と化成肥料とに分けられますが、これも有機肥料でも使い方によっては、苦くて不味くもなるし、化成肥料でも効かせ方が上手いと、味も美味しかったりもします。

大きな違いは、有機肥料にはアミノ酸が豊富な肥料があって、そのへんの効かせ方は結構味に変わってくるのかなと思います。専門的で申し訳ないのですが。。
代表的なのは魚カスとか米ぬかとかです。

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肥料の話はとても専門的になるので、このくらいで終わりたいと思いますが、要は美味しく作りたいと思っているか、そうでないかの違いが、農薬の使用の有無にわかりやすく現れているような気がしています。

 

そして肥料や農薬の使い方とか意識が大きく変わるのが、そもそも農家が自分の野菜をどう売りたいかではないかと思います!

これは自分が経験してきた事なんですが、以前に市場出荷向けに作っていた野菜は、教えられた通りに農協で化成肥料を購入して、農薬(殺菌剤・殺虫剤)を予防的に散布して野菜を栽培していました。
その時の野菜で大切な事は、「いかにきれいでたくさん収穫するか!」という点でした。なぜなら、市場でセリにかけられる際にきれいで形が揃っていて、なおかつ量が安定的な野菜が高値になるからです。

だから当然、それを目指した野菜作りになりますので、農薬の量や味はそこまで重要ではありません。
ちなみに農薬の量に規定はありますが、茄子やきゅうりの様な果菜類のような毎日収穫が続く野菜には、前日散布可能という農薬も結構あります。これも法律を守っていれば全然悪いことではありませんし、消費者が見えないので、特に罪悪感なんかも感じませんでした。

反対に、その真逆のお客さんへの直接販売では、何と言っても「味」です。
あとは、農薬を使っているかと、鮮度も重要です。
だから、きっと必然的に直接販売をする農家は、美味しさを求めるし、鮮度も保つように工夫します。
農薬は、その次くらいの重要度かなと思うので、農家によってはこれは直売でも変わらず使用してる人も結構います。

だから、売り先がセリを行う業者か、直接の消費者か、スーパーか、飲食店かなどによって作り方は変わるし、当然味も変わります。

全てじゃないけど、市場を通ってくるスーパーなどの野菜は、どちらかと言うと味よりも、違うところを重視して栽培しているのが多くなります。

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それと。(続けざまで読みにくいかと思いますが、、。)

実は野菜にはとっても多くの品種が存在していて、例えばトマトだけでも数百種はあると思うし、有名な桃太郎トマトシリーズも10種類以上あったりします。
農家はその中で、これだと思う種を選ぶのですが、そこにも市場向けの輸送に適した品種(つまり皮が固いとか)や、量が多く取れる、味が良い、柔らかい、色が濃い、とかもう色々あります。

実はその品種選びでも、野菜の味はやっぱり違ってきます。
そして、ここでも例えば、「柔らかくて美味しいけど収量が少なく傷みやすい」のか「病気に強く、収量も多いし、輸送性に優れる」品種を選ぶかで、当然出来上がる野菜も変わってきます。

これも結局は最初から、味で勝負するか、収量で勝負するか、で作り方はまるっきり変わります。

 

まだありまして、あとは収穫のタイミングもすごく大事です。
これも実はトラックでの輸送と、スーパーでの棚持ちとかとも非常に関係深く。

簡単に言うと、割れたり、へこんだりしないように早めに収穫をする場合があります。

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わかりやすいのが、トマトです!
トマトは最初は緑色の実をしていて、ある程度大きくなってそこから、赤く色付いていきます。トマトが成っているそのまま真っ赤になれば、それが完熟です。
完熟じゃないのは、真っ赤になる前のピンクとかで収穫したものです。

いくつかのの野菜は完熟するにつれて甘くなります。
パプリカも最初は緑色ですし、ピーマンも完熟すると実は赤くなります。万願寺も伏見唐辛子も。
トマトも同じです。完熟はピンクの状態よりも甘くなります。
でもその分皮が柔らかくなって、割れたりへこんだりしやすくなります。
つまり、輸送時に割れたり、スーパーの棚で汁を出したりするのです。

だから、美味しくなる前に少し固いピンクトマトで採ってから運びます。トマトはそのあと追熟といって、収穫後も少しずつ熟してはいくのですが、追熟したトマトでは畑で完熟させたトマトには敵いません。

といった感じで、トマトは収穫のタイミングで別物になります。
あとは、かぼちゃやサツマイモも変わるし、葉物や茄子、オクラ等は早採りは柔らかいけど、遅れると固くて美味しくなくなります。

 

肥料と種と、収量のタイミングですね。
他にも土質や気候やら、水の加減やらたくさんありますが、、。

でもやっぱり、その野菜を作った農家がどこを見て作っているかがわかりやすいんじゃないかと思います!