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美味しい野菜について

2016年11月11日(金) 考えごと

美味しい野菜について、ちょっと思うところを書いてみようと思います。(長いです。)

食べ物の美味しいは主観なので、農家は自分の作った野菜やコメが上手いと思っている事が多いように、結局は気持ちの部分も多いかとは思います。

一緒に食べる人や、食べる状況や、食材のイメージなんかも大いに影響しますね。あのテレビで目隠しして一流品か安物か食べ比べるやつみたいに。。

きっと野菜も大いにそれはあるとは思うのですが、でもやっぱりそれだけではないですね。

 

僕は農業を始めるまでは、実は野菜には全く興味がなくて、人参が土に埋まってる事や、茄子がぶら下がって成っている事も全然知りませんでした。だから当然、野菜に違いがあることも知らなかったし、「無農薬やから高い」それだけで思考停止な感じでした。一人暮らしで野菜取らなあかんから、100円ショップの値下げシール貼られた後のコールスローサラダを食べたら、とりあえず大丈夫とか思ってたので。

 

と言う感じでしたが、ここまで4年半程自営で試行錯誤して野菜を作ってみると、なんとなく美味しいと言われる野菜についていくつかわかった事がありました!

よく言われる勘違いに、「無農薬の野菜だから美味しい」というのがあります。

無農薬=美味しい。という事はなくて、思うに無農薬で作りたいと思う農家は、美味しい野菜を作りたいとも考えると思うので、そこで「肥料にもこだわる。」だから味が美味しくなるんじゃないかと思っています。

そこには、肥料の種類やタイミング、量、それからそもそも肥料をやらないという事もあります。

そのあたりのさじ加減は、季節によっても違うし、肥料の種類、土質、野菜によっても違うので、この辺りが味の違いで大きいのかなと思っています。

肥料と言えば、大きく分けて、有機肥料と化成肥料とに分けられますが、これも有機肥料でも使い方によっては、苦くて不味くもなるし、化成肥料でも効かせ方が上手いと、味も美味しかったりもします。

大きな違いは、有機肥料にはアミノ酸が豊富な肥料があって、そのへんの効かせ方は結構味に変わってくるのかなと思います。専門的で申し訳ないのですが。。
代表的なのは魚カスとか米ぬかとかです。

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肥料の話はとても専門的になるので、このくらいで終わりたいと思いますが、要は美味しく作りたいと思っているか、そうでないかの違いが、農薬の使用の有無にわかりやすく現れているような気がしています。

 

そして肥料や農薬の使い方とか意識が大きく変わるのが、そもそも農家が自分の野菜をどう売りたいかではないかと思います!

これは自分が経験してきた事なんですが、以前に市場出荷向けに作っていた野菜は、教えられた通りに農協で化成肥料を購入して、農薬(殺菌剤・殺虫剤)を予防的に散布して野菜を栽培していました。
その時の野菜で大切な事は、「いかにきれいでたくさん収穫するか!」という点でした。なぜなら、市場でセリにかけられる際にきれいで形が揃っていて、なおかつ量が安定的な野菜が高値になるからです。

だから当然、それを目指した野菜作りになりますので、農薬の量や味はそこまで重要ではありません。
ちなみに農薬の量に規定はありますが、茄子やきゅうりの様な果菜類のような毎日収穫が続く野菜には、前日散布可能という農薬も結構あります。これも法律を守っていれば全然悪いことではありませんし、消費者が見えないので、特に罪悪感なんかも感じませんでした。

反対に、その真逆のお客さんへの直接販売では、何と言っても「味」です。
あとは、農薬を使っているかと、鮮度も重要です。
だから、きっと必然的に直接販売をする農家は、美味しさを求めるし、鮮度も保つように工夫します。
農薬は、その次くらいの重要度かなと思うので、農家によってはこれは直売でも変わらず使用してる人も結構います。

だから、売り先がセリを行う業者か、直接の消費者か、スーパーか、飲食店かなどによって作り方は変わるし、当然味も変わります。

全てじゃないけど、市場を通ってくるスーパーなどの野菜は、どちらかと言うと味よりも、違うところを重視して栽培しているのが多くなります。

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それと。(続けざまで読みにくいかと思いますが、、。)

実は野菜にはとっても多くの品種が存在していて、例えばトマトだけでも数百種はあると思うし、有名な桃太郎トマトシリーズも10種類以上あったりします。
農家はその中で、これだと思う種を選ぶのですが、そこにも市場向けの輸送に適した品種(つまり皮が固いとか)や、量が多く取れる、味が良い、柔らかい、色が濃い、とかもう色々あります。

実はその品種選びでも、野菜の味はやっぱり違ってきます。
そして、ここでも例えば、「柔らかくて美味しいけど収量が少なく傷みやすい」のか「病気に強く、収量も多いし、輸送性に優れる」品種を選ぶかで、当然出来上がる野菜も変わってきます。

これも結局は最初から、味で勝負するか、収量で勝負するか、で作り方はまるっきり変わります。

 

まだありまして、あとは収穫のタイミングもすごく大事です。
これも実はトラックでの輸送と、スーパーでの棚持ちとかとも非常に関係深く。

簡単に言うと、割れたり、へこんだりしないように早めに収穫をする場合があります。

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わかりやすいのが、トマトです!
トマトは最初は緑色の実をしていて、ある程度大きくなってそこから、赤く色付いていきます。トマトが成っているそのまま真っ赤になれば、それが完熟です。
完熟じゃないのは、真っ赤になる前のピンクとかで収穫したものです。

いくつかのの野菜は完熟するにつれて甘くなります。
パプリカも最初は緑色ですし、ピーマンも完熟すると実は赤くなります。万願寺も伏見唐辛子も。
トマトも同じです。完熟はピンクの状態よりも甘くなります。
でもその分皮が柔らかくなって、割れたりへこんだりしやすくなります。
つまり、輸送時に割れたり、スーパーの棚で汁を出したりするのです。

だから、美味しくなる前に少し固いピンクトマトで採ってから運びます。トマトはそのあと追熟といって、収穫後も少しずつ熟してはいくのですが、追熟したトマトでは畑で完熟させたトマトには敵いません。

といった感じで、トマトは収穫のタイミングで別物になります。
あとは、かぼちゃやサツマイモも変わるし、葉物や茄子、オクラ等は早採りは柔らかいけど、遅れると固くて美味しくなくなります。

 

肥料と種と、収量のタイミングですね。
他にも土質や気候やら、水の加減やらたくさんありますが、、。

でもやっぱり、その野菜を作った農家がどこを見て作っているかがわかりやすいんじゃないかと思います!


農業について:①端境期について

2016年10月07日(金) 考えごと

最近、当たり前の事ですが一つあらためて思ったことがあります。

それは、農業の事を知らない人が多い!という事です。

まぁそれは別に悪いわけではなく、自分も林業も漁業も酪農の事も、同じ一次産業なのに全く知らないので、当然なのですが。

人と話をしていると、農業の話で「そうなんだぁ〜!」と驚かれる事が結構あるので、ちょっと秋の夜長を利用して、色々と農業についての、多くの人が知らない事を書いていこうかな、なんて思いました。

と言ってもまだ農家歴4年半ですので、知らない事だらけかもしれませんが、そんな浅い経験からの目線も含めて頑張って書いていきます!

 

という事で、1回目は

端境期です!読み方は「はざかいき」です。

端境期は、簡単に言うと野菜の採れなくなる時期で、地域にもよりますがだいたい秋は10月、春は3月〜4月前半頃を指します。京都ではこの時期だと思います。

なぜ少ないかと言うと、ちょうど春夏野菜と秋冬野菜の入れ替え時期に当たるからです。

あらい農園でも今はちょうど秋の端境期に入ってきており、夏に活躍したトマトやきゅうりは品薄になり、茄子やオクラも最盛期から考えると寂しくなるような収量です。
夏野菜はやはり夏の気候に合っているので、これから気温が下がって寒くなるにつれて、花もあまり咲かなくなり、たまに花が咲いて実がついても、ゆっくりしか大きくならず、あまり採れません。

反対に、冬野菜はこれからが本番になるのですが、収穫はもう少し先になります。
本当はこの10月前半頃から収穫が開始できれば良いのですが、そうするには8月の真夏に種蒔きをしなければならず、難しいのです。

理由は、野菜にはそれぞれ発芽適温と生育適温があって、冬野菜の発芽適温はわりと低いので、真夏に種蒔きをしても発芽しにくいからです。

ハウスに黒い資材を被せて、日陰にしたりと上手にすれば可能ではあるのですが。

そんな事で、今の10月というのは、ちょうど夏野菜が終わりに向かい、冬野菜もまだ出揃わない時期なので、野菜の種類が少なくなってしまいます。

ちなみにこの10月に収穫期を迎えるのは、まずはお米です!

それからサツマイモ、里芋、生姜、落花生などです。
よく収穫の秋と言われるのは、きっとお米の事を指していて、野菜は芋類の事なのかも‥と思います。

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端境期とか、旬とかは、基本的には露地栽培で、気候に合わせた野菜の作り方の事を言っていると思うので、ハウスを駆使すればこの端境期はなくす事ができますし、日本列島は縦長で気候が違っているので、産地リレーをしていけば、1年中だいたいの野菜は手に入りますね!

冬にきゅうりやトマトが売られているのは、ハウス内を灯油などで温めて、温室ハウス内で栽培しているからです。

 

次に、秋の端境期よりも長いのが春の端境期です。

こっちは、本当に野菜がなくなります!
野菜の直売所なんかでも、野菜棚がガラガラになります。

3月、4月の端境期の原因は大きく2つあります。
1つ目は、この時期に収穫をしようと思うと、種蒔きの時期を逆算すると、例えば播種から収穫までが短い小松菜でも1、2月頃になります。

この時期は真夏と逆で、今度は気温が低すぎて発芽しませんし、したとしても寒すぎて大きくなりません。ちなみにあらい農園のある京北黒田では冬の間、畑は雪が積もって入れません!

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そんな事で露地では収穫が難しいのです。

2つ目は、花が咲いてくるという問題です。
野菜も、植物なので、遺伝子を残すために、最後は花を咲かせて、種をつけて朽ちていきます。
その花が咲くのが問題で、例えば大根だったら、葉の中心部から茎みたいなのがニョキっと伸びてきますし、キャベツや白菜は、球の中心部からそれが伸びてくるので、球が割れて、そこから花が咲いていきます。

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全部の野菜は花を咲かせるのですが、葉物(ほうれん草、水菜、小松菜、白菜、キャベツなど)は花が咲くと葉が硬くなったり、根菜(人参・大根・かぶなど)だとカスカスになってしまいます。
どうやら、種をつける方に養分を回すようで、そうなると食べても硬いし、美味しくないので、商品価値はなくなります。(ナバナなど、花芽を食べる野菜はこの原理で花芽がついたのを収穫します!)

この花芽がつくのが、だいたい2〜3月の時期になります。
この原因は、温度の上昇と、1日の陽の出ている時間が長くなることからなんです。

温度か陽の長さかは、作物によるのですが、だいたい春が近づくと、冬たちはいっせいに花を咲かせ始めて、農家を困らせます。。

ちなみに土手に菜の花が咲き乱れるのも、同じ原理です!

 

それと、気温がまだ低く、春の野菜がまだ大きくなっていないので、3月〜4月前半は特に野菜が少なくなるのです。
あらい農園のような、野菜BOXで、1年を通して野菜の種類を揃えたい農家は、この端境期をいかに乗り越えるかが、本当に頭の悩ませどころになります。。

今年はハウスをたくさんお借りできたので、頑張って種蒔きの時期をずらしたり、かぼちゃや、芋類などの保存の効く野菜を、多めに作ったりして、乗り越えようと努めています!

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という感じで、端境期というのは、気候的に避けては通れないものです。

長くなりましたが、端境期の説明でした!