鹿を捕獲してから考えた事

2016年07月09日(土) 考えごと

少し前になりますが、ワナ猟免許を取得して初めて鹿を捕獲しました。

なかなか忙しくて、ただでさえ農園日誌の更新も滞っているのですが、この事はできれば文章にしたいと思っていたので、少し前の事ですが思い出して書いていこうと思います。

きれいな事ではない内容もありますので、そういうのが苦手な方は気をつけて読んでください。

 

狩猟免許には、大きく分けてワナと、鉄砲の2種類に分けられます。
僕はワナ猟免許を昨年の冬に取得しました。理由は鉄砲はやはり管理が厳しいのと、狩猟の初心者としてはまず、ワナに掛かった動物を自らの手で仕留める事が必要ではないかと考えたからです。

狩猟免許を取得しようと思ったきっかけは、何度も何度も畑に入られて、大切な作物を荒らされてきたからです!

畑を荒らす動物は色々ですが、特にひどいのは、鹿とイノシシです。あと、カラスも最悪ですし、サルにを目を付けられたらこれはもう農業諦めるかって思うくらいにひどいもんですが、あらい農園のこれまでの被害は猿よりも鹿とイノシシです。

農園のある京北では、過疎化が進んでいますが、人口と反比例して鹿などの獣が増え続けています。今や人の数なんかよりも全然多いんじゃないでしょうか。

田畑もそうですし、山の管理もできなくなると人里との境界が曖昧になってきて、獣が畑にやってくるのでしょうか。
狼がいなくなってから、天敵がいない鹿が爆発的に増えたとか、昔に比べて猟師が減ったとか、色々あると思います。
また、山がスギやヒノキだらけで伐採などの管理ができておらず、地面に陽が当たらないので、獣の食べる草が少ないとかもあるのかもしれません。

とにかく、京北では鹿が激増していて、田畑はネットや電気柵がなければ壊滅的ですし、あっても安物のネットなら食いちぎって侵入しますし、高さが1m50cmくらいならジャンプして入ってきます。電気柵も鼻先に触れたりしなければ入られるようですし、なかなか大変です
ちなみにイノシシは地面を掘り起こして侵入してくるので、目を付けられたら防ぐのは厳しいですし、サルなんかは賢いから上から上手に入るので、やってられません。

 

前置きが長くなってしまいましたが、そんな状況でうちもひどく被害に遭ってきました。農家になって間もない自分にとって、獣による容赦ない獣害は、本当に辛いものがありました。生活が掛かった大事に育ててきた野菜が、翌日には無残に荒らされたりすると、腰から崩れそうになるくらいに、力が抜けて目の前が真っ暗になります。

そんな事が一度や二度じゃないので、狩猟で鹿を捕獲する事は、ただ自分の生活を守るためにするべきだ!なんて思い、取得しました。

 

ただ思うのは、自分がいくら大量に鹿を捕獲したところで、一体どれだけの効果があるのかという疑問です。狩猟をする事で地域の農家や家庭菜園をしている村の方々を助けるような部分もある事はありますが、効果は限られています。

そんな事を考えながら狩猟免許試験の当日、思った以上に多い受験者を目の当たりにして、

狩猟っていうのは趣味か⁈

という雰囲気の会場に違和感を感じたりもしました。

遡ると免許取得の時点から、
自分のやられた憎悪による復讐心みたいなものと、
冷静に考えたら動物の命を奪うという事はどういう事なのか。

これがよく整理のつかないままにこの前の実践を経験しました。

 

ようやく、ここから体験記です。。
地域に一人だけワナ猟をされている方がいらっしゃって、その猟師さんに今の家のすぐ近くの山際に檻のワナを設置してもらいました。
ワナには他にくくりワナという、その場所を踏むとワイヤーが閉まって足が抜けなくなるタイプのワナもあります。

今回の檻の箱ワナは、奥の方に野菜の屑などを置いておき、その手前に見えない細い糸を張っておき、そこを動物が通ると、その糸が切れて、引っ張ってある前の柵がドスッと落ちるという仕掛けです。

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この時は米ぬかが置いてありますが、掛かった時は虫食いレタスやキャベツの葉を捨てていました。

いつ掛かるかと思いながら過ごしてから1週間ほどたったある日、朝ふと見ると茶色の物体が動くのが見えました。メスの鹿でした。

猟師さんに捕獲する道具を持ってきてもらいました。
道具とは、先に刃物がついた長い棒です。

ワナ猟は、罠に掛かってから、自らの手で仕留める必要があります。

鉄砲があれば打てば動物は死にますし、なければこのような檻の場合、刃物で心臓を刺します。
実はこの少し前に、たまたま農作業をしていたら他の方の畑のネットに鹿が足を絡ませていた事があり、その時には猟師さんが鹿を仕留めるのを間近で見ていました。

なので、今回自分で初めてそれをする事になっても、なんとなくできる気はしていました。

 

ワナを設置するという事は、掛かった際には自分の手で動物を殺す事になる。

それは分かっていましたし、いざその槍を渡されても、不思議と緊張する事もなく、躊躇する事もなく槍を鹿に向けました。

今思うと、これまでの経験があったから、自分の中で鹿を殺す事に対して当然の事だと思う気持ちがあったのかもしれません。
自分も生活をかけて野菜を作ってるし、獣も同じで、捕まえられたら最期だと思ってるはずだと。

 

槍を持って近づくと鹿だって賢いから、当然自分が殺される事はわかります。

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狭い檻の中を逃げ回ろうと必死でした。

後から考えると当然ですが怖かったと思います。

その時の僕はとにかく心臓に一発で刺さるようにタイミングを見計らっていました。
せめて苦しまないように仕留めるべきだと思いました。

 

鹿の心臓は前足の間にあるようで、動き回る鹿のその部分を突くのは難しく感じました。

 

細かい事は割愛しますが結果的に最期に息を引き取るまでに4回刺すことになりました。
一度で死なかったので、あとは早く心臓を刺して苦しまないようにと必死になりました。
鹿の生命力は凄まじく、そのまだ生きている状態の姿と、最期にドズンと倒れる瞬間は鮮明に覚えています。
これは自分のように、鹿を殺す理由を自分の中で正当化していて、憎しみみたいな強い感情が積もってなければ、できないんじゃないかと思いました。

 

鹿が死んだら、檻から引きずり出して、猟師さんの軽トラに乗せて解体するために河原まで運びました。
本当は真っ先にお腹を割いて、ガスを抜く必要があります。そうする事で、ガスの臭みが肉につかないとの事です。
今回は、自分の刺し方もあってすでにお腹が裂かれていたので、すぐに運びました。

 

解体は、内臓をきれいに取り出し、そこからモモの部分や背中のお肉をナイフで切って持ち帰り、それ以外の部分は今回は山に掘ってある、獣の死骸を持って行く場所に持って行きました。(鹿肉はクセがあり、食用での流通は限られているので、捕獲された鹿の多くはそのまま山に置いて置く事が多いのが実状です。)

鹿はまだ体温で温かく、生きていたのだと改めて実感しました。

そのメス鹿はお乳があって、白いミルクも出てきました。おそらく子連れのお母さん鹿だったと思います。

猟師さん曰く、鹿は親子で行動しているから、親が罠に掛かれば山から子鹿が見ているし、反対ももちろんある。悲しそうな鳴き声が聞こえることもあるようです。

考えてみれば、鹿でもイノシシでも同じ動物で、人間とは知能が違っても、例えば犬や猫とも同じで、親や子がいて愛情を注ぐし、人にも懐くし感情もあります。

鹿やイノシシにだって、もちろんあるでしょう。だとすれば、これを見ていた子鹿や、捕らえられた時にこの親子はどう感じたのでしょうか。
そんな事を考えると、狩猟の意味を考えます。

後から檻に入って、狭い中から外を見てみました。
人間が近づいてくるのは怖かったに違いありません。もしも自分がその状況だとしたら、考えるだけで息が詰まりそうです。

 

そうまでして、1匹の鹿の命を奪う事にどれだけの意味があるのかと思います。
畑をガチガチに完全に防御して、それはお金も手間も掛かりますが、物理的に入られないようにすれば、別に鹿が畑の周りをウロウロしていても関係ないだろうとも思います。

鹿が多くて困っているのは、わかりますし、何よりも専業農家の自分が一番困ります。でも罠仕掛けて1匹ずつ殺して数を減らしたところで、何が変わるのかと。

命をいただく事についての経験としては少しは必要な気もしますが。
でもだからと言って、牛や豚や鶏肉についての考えが、今のところは変わっていません。
でもきっと屠殺場とかを見れば、また変わるのかもしれませんが。

また鉄砲でもなく槍を使って感触があったから、命をいただくという「食」の前に、殺すという事がすごく重いように感じます。

鹿なんかは本当にかわいいし、自分も動物はすごく好きなので。

なかなかこの事は簡単に答えが出ないと思いますし、しばらく考えながら過ごしていきたいと思います。

今もまたワナの近くで鹿を夜な夜な見かけるのですが、今はこれ以降ワナは仕掛けていません。どうしようかと思っています。

長くなりましたが、今現在狩猟の経験から思う事を少し書きました。

これからもまた田舎で獣と過ごしていく農家なので、引き続き考えていきます。

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あらい農園トマトへの想い

2016年06月25日(土) 考えごと

トマトの収穫が始まりました!

まだ収穫量はそれほど多くはありませんが、これから完熟したトマトをお届けできる事と思います!

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今年京北で、ハウスを初めてお借りする事ができたので、そのハウス内での栽培です!
ハウスはビニールハウスなので、日光が当たると気温が上がり、春先のまだ寒い京北でもトマトの生育を助けてくれます。
また、雨が入らないので、水やりはポンプを使った潅水をする必要がありますが、その分水の吸収をある程度調整できるというメリットもあります。

トマト栽培において、水の管理は最重要です。水が多いと味がそのまま水っぽくなりますし、赤く熟したタイミングで大雨になると、露地などの場合は、中からの水分吸収に外皮の成長が追いつかずに、割れてしまうことが多いのです。

それともう一つ、トマトも多くの野菜と同じく、花が咲いて、その花の雌しべに、雄しべの花粉が受粉をして果実をつけます。これが当たり前ですがとても大事なのです。

自然界ではこの役割は主にハチなどの虫が担っていますが、ビニールハウスでは蛾の侵入などを防ぐために、基本的には虫が入れないようにしています。
なので、この受粉は横から入る風によるものか、人間の手でしていきます。

たぶん無農薬でないトマトのほぼ95%以上は、トマトトーンと呼ばれる、ホルモン剤を花に吹きかけて受粉をさせています。これはすごく楽で、受粉も確実に行えるのですが、トマトトーンは農薬なのであらい農園では使用しません。

その代わりに手で花を揺らして、雌しべの周りにある花粉を付けるようにしています。うちではこの仕事は「花揺らし」と呼んでいます!

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5月に一番最初の花が咲いてから、夫婦二人で花揺らしをしながら、大きくなって欲しいと願い、この収穫の日を迎えました。
やっと赤いトマトが採れた事を二人でとても喜びました!

それは今年のあらい農園にとってトマトは本当に特別な存在だからです。

トマトは野菜の王様と言われるだけあって、種類も多くて、多くの方が大好きな野菜です。農家になってから、お客さんからトマトが欲しい、と言われた事は数え切れませんし、数ある野菜の中でダントツに聞かれます。

時には、「時期じゃないのでトマトはない」と言ったら、すごく残念そうな反応が返ってくる時もあって、そんな時はそのトマト熱に少し嫌になる時もあります。

旬の野菜の美味しさを知って欲しいと思いながら野菜作りをしているので。

とまぁとにかくトマトは特別な存在で、もちろんお客さんからも期待の声を多く頂いています。とってもありがたい反面、すごくプレッシャーにもなります。

期待をしてもらいながら、お届けができなかったり、全然美味しくなかった場合に、ガッカリさせてしまうのはとても辛いことです。

去年は、まさにそれでした。
露地で病気が蔓延してしまい、結局ほとんどのトマトの樹が赤く熟して収穫を迎える前に枯れてしまいました。お客さんには、楽しみにしといて下さい!と言いながら全くお届けができませんでした。

それはもう最悪なことで、あの時の一面枯れ上がったトマトの姿は今でも鮮明に覚えています。

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去年も気持ちは同じで、トマトを夏の主役にしてあらい農園の野菜がこんなに美味しいんだ!って思ってもらいたい‼︎
と言う気持ちで取り組んでいました。

その主力が全滅した時から、この一年後のリベンジを誓ったのでした。
そしてそして、今ようやく収穫の時を迎えたのです。嬉しくないはずがありません。

誰よりも自分たちが待っていたと思います!

 

「花揺らし」をしながら、しっかり育って欲しいと願ってここまでやってきました。
よく野菜作りにおいて、「野菜は足音を聞いて育つ」と言われます。
しっかり気に掛けて世話をすれば、野菜は応えてくれるという意味です。
今回それをすごく考えました。
もうこれで2年連続トマトが届けられなかったら、と思うとなかなかのプレッシャーです。。
去年もそうでしたが、主力と考えて、かなり多くのトマトを植え付けています。
なので、春の時点では「たくさんお届けできると思います‼︎」と言っています。

それがまた無理だなんて事になれば、それこそ嘘つきホラ吹き農家じゃないか!と自分にも言い聞かせてきたので。(勝手にですが)

 

そんなことで他の作物に比べて、トマトには特別な想いが詰まっています。

上手に収穫ができれば9月頃までは採れる予定なのですが、なにせトマトは病気になりやすい作物です。特にハウス内では菌やカビも蔓延しやすくて、病気のリスクは高くなっています。今は梅雨でジメジメするので、要注意です。一つの病気のサインを見つけたら、その株にいくら立派なトマトがぶらさっがていようが、根こそぎ引き抜いて、処分します。
殺菌剤が使えない分、病気になればなす術がないので、無農薬ではいかに病気にならないかを特に気をつけます。

健康に育つように心がけること、風通しをよくする事などです。

まだまだ採れ始めたばかりなので、全然油断はできないのですが、これからどんどん実が赤くなれば、十分な量のトマトをお届けできると思います。

 

どうしたら味が美味しくなるか、いつまで、どれだけの量が採れるかは、これからの自分たち次第です。栽培が難しいトマトですが、長く採り続けながら、しっかり学びながらこの夏はトマトと向き合っていければ良いなと思います。

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